俳優や声優などの芸能活動をするとき、事務所に所属したほうがいいのか、それともフリーランスで活動するほうがいいのか、迷うこともありますよね。
事務所に入るとどんなメリットやデメリットがあるのか、経験談も交えながらわかりやすくお伝えしたいと思います。
自分に合ったやり方を選ぶための参考になればうれしいです。
事務所に所属するとはどういうこと?

俳優・声優が事務所に所属する意味
俳優や声優が事務所に所属する、というのは簡単に言うと「自分の活動を後ろから支えてくれるチームができる」ということです。
オーディションやマネジメント、契約の手続きなどを一手に引き受けてくれるのが事務所の主な役割です。
自分は演技や声の仕事に集中できるようになるので、事務所があると安心して活動しやすいです。
フリーランスとの違いは?
フリーランスの場合は、仕事の獲得からお金の交渉、スケジュール管理まで、自分ひとりでこなさなければいけません。
好きに動ける代わりに、営業や契約関連の作業が大変です。
事務所に所属すると、そのあたりを助けてもらえる代わりに、一定のルールや決まりに従う必要が出てきます。
どちらがいいかは、自分の性格や働き方のスタイル次第です。
事務所に所属するまでの流れ
普通はオーディションを受けて合格し、所属が決まるのが一般的です。
スカウトされる人もいますが、実はスカウトされるのは本当に一握りです。
他にも、紹介というケースもあります。
初めは養成所に通ってから事務所に合格するパターンも多いです。
僕も1995年に芝居を始めたときは養成所に入り、1年ほどレッスンを受けました。
そこで最初のテレビCMの仕事をもらって、少しずつ映像の仕事も増え、それがきっかけで芸能事務所に所属する流れになりました。
事務所に所属するメリット

仕事を獲得しやすくなる
最大のメリットはこれです。
事務所が自分の代わりに仕事を探してくれるので、オーディション情報や出演依頼が舞い込みやすくなります。
僕も事務所に所属していた頃は、感覚的に言うと9対1の割合で所属事務所から紹介してもらうことが多かったです。
特に最初のうちは実績やコネクションが少ないので、事務所のネットワークはとても心強いです。
オーディション情報が得られる
事務所に所属すると、普通なら公開されていないようなオーディション情報も入ってきます。
映画やドラマ、CMのオーディションは有名なもの以外にもたくさんあって、細かい仕事も多数存在します。
フリー活動するなら、自分で探して応募しないといけないのですが、所属事務所のマネージャーが「こんなオーディションがあるから受けてみようか?」と提案してくれるので助かります。
営業や契約などのサポートが受けられる
ギャラの交渉や契約書の確認は、意外と面倒で大事です。
フリーランスだと、クライアントと直接話さなければいけません。
ストレスを感じることもあります。
事務所に所属していれば、マネージャーが間に入って調整してくれるので安心です。
とくに業界独特の契約条件もあるため、プロの目線でチェックしてもらえるのは大きなメリットです。
信頼性やブランド力がつく
「どこどこ事務所所属の俳優(声優)」と名乗れるだけで、業界内外からの信頼がアップしやすいです。
仕事をするうえで「個人」ではなく「事務所のタレント」扱いになるので、特に初対面のクライアントに対して安心感を与えられます。
また、有名な事務所であればあるほど「ブランド力」による恩恵を受けやすいです。
仕事に専念できる環境が整う
現場での活動に集中できるのもメリットです。
フリーのときのように、営業や宣伝、細かな契約トラブルなどに頭を悩ませる機会が少なくなります。
僕自身も所属してからは、稽古やレッスンに集中しやすくなりました。
声の仕事が増えてきたころも、事務所スタッフがスケジュールを調整してくれたので、とにかく演技や声の出し方を磨くことに全力を注げたのを覚えています。
レッスンやトレーニングを受けられる
事務所によっては、所属者向けのレッスンやトレーニング制度があります。
プロの講師が在籍していたり、外部の講師を招いてレッスンを行ってくれる場合もあります。
養成所だけでなく、事務所所属後も継続してスキルアップができるのはうれしいポイントです。
僕も所属当時、事務所内でナレーションやMCのレッスンをしてもらったおかげで、役者としてだけではなく、ナレーターとしてラジオパーソナリティーや司会のオファーも入るようになり、仕事の幅が広がりました。
事務所に所属するデメリット

所属費用やマネージメント料がかかる
大前提として、所属費用や手数料(マネージメント料)が発生します。
事務所によっては入所時にまとまった金額を支払う必要があったり、出演料から一定のパーセンテージを引かれたりします。
事務所の規模や方針で変わるので、契約するときはしっかり確認しましょう。
仕事の自由度が下がる
所属タレントとして活動すると、事務所の方針に合わせる必要が出てきます。
やりたくない仕事でも事務所から「ぜひやってほしい」と言われれば検討しなければなりません。
逆に自分がやりたいと思った仕事でも、事務所がNGを出す場合もあります。
僕も絶対に出たいと思っていた映画作品に「出演料があまりに安い」という理由で事務所からNGが出たことがありました。
自分の意思だけで活動できない
どうしても事務所のマネージャーや上層部との相談が必要になる場面が多いです。
フリーランスだと「思い立ったらすぐに行動!」ができますが、事務所所属だと「まずは事務所に相談」という順番になります。
急な舞台出演の話が来たときも、事務所のスケジュールや方向性をふまえてOKが出るかどうかを確認しないといけないです。
事務所の意向に左右される
たとえば、声の仕事に力を入れている事務所であれば、自然と声優やナレーション方面の仕事が増えるかもしれません。
一方で舞台や映像にはあまり力を入れていない事務所だと、そちらの仕事を獲得しにくいなどの差が出やすいです。
事務所の特色と自分がやりたいことが合わないと、不満を感じることもあるでしょう。
ノルマや競争が厳しい場合もある
事務所によっては、「毎月〇件以上のオーディションに参加しないといけない」「レッスンに必ず参加しないといけない」といったノルマが課されることもあるようです。
また、所属タレント同士が似たタイプだと競争が起こることもあります。
僕もかつて、小劇場や映像仕事のキャスティングで同年代が多く、「あの人と似た役どころだから、今回は見送りかな」なんて言われて苦笑いしたことがありました。
契約解除が難しいことも
事務所を辞めたくても、契約期間や規約によってはすぐには抜けられない場合があります。
やむを得ない事情やケガ、手術といった健康上の問題もあるかもしれません。
僕はのどの手術をして活動休止に入りましたが、そのような事情でもマネージャーと何度も話し合い、契約の整理や更新のタイミングを考えながら進めました。
辞めるだけでも一苦労というケースもあるので要注意です。
自分に合った選択をするために

事務所に所属するのが向いている人
- オーディション情報やマネジメントを任せたい人
- 仕事の獲得や契約交渉を自分ひとりでやるのが不安な人
- ブランド力や知名度がほしい人
- 行政手続きや営業をまとめてやってもらいたい人
フリーランスが向いている人
- 何でも自分で動きたい人
- 柔軟なスケジュールで好きな仕事を選びたい人
- 事務所の指示やルールに縛られたくない人
- 得意な営業力を活かして自分で仕事を見つけられる人
どんな事務所を選べばいいのか?
- 舞台中心なのか、映像中心なのか、声優中心なのか、事務所の得意分野を確認する
- 所属費用やレッスン費用、マージン率をしっかりチェックする
- マネージャーやスタッフとの相性も大事。面談時に雰囲気を感じ取ろう
- 在籍している先輩俳優・声優の仕事実績を見て方向性をイメージする
事務所に所属する前に確認すべきこと
- 契約期間や途中解除の条件
- レッスンや研修制度の有無と費用
- オーディション参加に費用がかかるかどうか
- 具体的にどんな仕事に力を入れているのか
- 営業のサポート体制(HPやSNSによる宣伝など)
事務所に所属するまでのステップ

所属オーディションやスカウトの仕組み
オーディション情報は事務所の公式サイト、業界誌、友人からの紹介などから集めるのが一般的です。
ほとんどの場合は、事務所の公式サイトで案内されています。
書類選考や実技審査(演技、ナレーションなど)を経て合格すると、所属が決定します。
スカウトは道端や舞台観劇後などで声をかけられるケースもありますが、これは宝くじのように確率が低いので、狙ってなるものではありません。
事務所の選び方とリサーチ方法
まずは自分の目標ややりたい仕事と、事務所の活動内容が合っているかを確認しましょう。
舞台メインなのか、映像メインなのか、声優メインなのか、事務所によって特徴があります。
所属俳優・声優の出演情報をSNSや公式サイトでチェックするのも効果的です。
知り合いがいれば直接話を聞いてみるのもいいでしょう。
契約時の注意点と確認ポイント
- 所属費用や月々のレッスン料
- 仕事のマージン率(マネージメント料)
- 辞めたいときの条件や手順
- どこまでサポートしてくれるのか(営業、契約交渉など)
- 芸名や肖像権などの管理も事務所によってルールが異なる
所属後に意識すべきこと
所属したからといって、すべてが安泰になるわけではありません。
むしろ所属後が本番です。
事務所はきっかけやチャンスを与えてくれますが、それを掴み取るのはあなた次第です。
レッスンやオーディションでしっかり結果を出して、事務所に自分を推してもらう必要があります。
あとは、マネージャーや先輩タレントとのコミュニケーションが大切です。
いざというときに相談できる相手をつくっておくと、活動が楽になります。
【まとめ】事務所に所属するかどうかを慎重に考えよう

事務所に所属するメリットは、仕事やオーディションの獲得がしやすくなり、営業や契約の面でサポートを受けられることです。
逆にデメリットとして、所属費用がかかったり、事務所の方針に振り回されたりする可能性もあります。
自分のやりたい方向性や性格、そして将来のプランに照らし合わせて選ぶのが一番です。
僕の場合は、最初は養成所に通って小さな仕事をもらいながら始まり、小劇場での舞台活動を経て、その後に芸能事務所に所属して映像や商業舞台の経験を積みました。
そのおかげで活動の幅は広がり、声の仕事や講師の仕事を並行して行うことができました。
でも、事務所へのマージンやスケジュール管理の制約などもありましたし、やりたい舞台にすべて出られるわけではないというジレンマもありました。
最終的には「自分はどういう活動を優先したいのか?」を考えて決めるのが一番です。
フリーも事務所所属もそれぞれに良さがあります。
ぜひあなたも慎重にリサーチして、納得のいく道を選んでみてください。