演劇と聞くと、台本を覚えてセリフを言うイメージを持つ人が多いかもしれません。
でも実は、台本だけが演劇のすべてではありません。
役者がその場で自由に動き、頭に浮かんだアイデアを瞬時に表現する練習方法として「エチュード」と呼ばれるものがあります。
エチュードは演技経験の少ない人でも取り組みやすく、楽しみながら創造力を伸ばせるのが魅力です。
エチュードについて全くわからないという人は、ジャルジャルさんのこのネタを見てもらうと、エチュードとは何かがわかると思います。笑
この記事では、演劇のエチュードの基礎から、具体的なやり方やコツまで、わかりやすく解説します。
演劇に興味を持ちはじめた人はもちろん、普段とは少し違った表現を体験したい人にもおすすめです。
演劇のエチュードとは?基礎から理解しよう

エチュードとは何か?演劇における役割
エチュードとは、簡単にいうと「即興演技の練習」です。
あらかじめ用意された台本やセリフを覚えるのではなく、その場で思いついた行動やセリフを自分たちで作り上げていきます。
演劇では役者同士が息を合わせたり、瞬間的に反応する能力が求められます。
エチュードを通じて、役者は「予想外のことが起きても対応できる柔軟さ」を身につけることができます。
また、自分の頭の中にあるアイデアを素早く形にするための発想力も磨かれます。
エチュードは、プロの役者だけでなく演劇を学びはじめたばかりの人でも手軽に体験できるところが魅力です。
セリフを間違えても失敗しても大丈夫。
むしろ失敗から新しいアイデアが生まれるのがエチュードの面白いところといえます。
なぜエチュードが大切なのか?即興の力と創造性
演劇を上達させるには、感情表現や台本暗記だけでなく「今この瞬間にどう動くか」という即興の力が大事です。
エチュードを繰り返すことで、自分の中にあるアイデアをすぐに出す練習ができます。
- 瞬間的な反応が身につく
舞台上ではアクシデントが起こることもあります。
エチュードを重ねると、咄嗟に対応できるスキルが自然と鍛えられます。 - アイデアの幅が広がる
台本がある芝居では制限が多くなりがちです。
でもエチュードだと自由に動ける分、自分だけでは想像できないような展開が生まれることがあります。 - チームワークが深まる
他の役者と一緒にエチュードをすると、お互いの考えや癖を知るきっかけになり、チームとしての一体感が増します。
エチュードと台本の違い|自由と制約のバランス
台本があると、キャラクター設定やセリフがあらかじめ決まっています。
役者はその範囲内で演技する必要があります。
でもエチュードでは、登場人物も設定も自由に考えられる分、失敗も成功もすべて自分たちのアイデア次第になります。
台本がある演技とエチュード、それぞれのメリットをまとめると以下のようになります。
演技スタイル | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
台本がある演技 | ・セリフや設定が決まっている ・リハーサルで仕上げる | ・演技の方向性が明確 ・役になりきりやすい | ・自由度が低い ・台本への依存度が高い |
エチュード | ・場面設定やセリフを即興で作る ・失敗も面白さにつながる | ・自由度が高い ・発想の幅が広がる | ・展開が予測不能 ・構成やテーマがぼやけやすい |
どちらも大切な手法ですが、エチュードは台本にはない「即興の楽しさ」や「柔軟な発想力」を鍛える点で非常に役立ちます。
そして、ドラマや映画など映像の世界でも活動していきたいと思っている人は、この即興力は非常に武器になるので、ぜひとも身に付けておきたいところです。
エチュードの種類とやり方|実践に役立つポイント

エチュードの主な種類|芝居を深めるための練習法
エチュードにはいろいろなバリエーションがあります。
ここでは代表的な例をいくつか紹介します。
- 状況設定エチュード
ある状況や場所を設定して、そのシチュエーションに合わせて即興で動く方法です。
たとえば「砂漠で水を探す2人」とか「渋滞中の車で会話する家族」など、場面のイメージを膨らませて演じます。 - 感情エチュード
「怒り」「悲しみ」「喜び」など、特定の感情をテーマにして動きます。
登場人物がどんな気持ちでそこにいるのかを想像して、セリフや行動に反映させるのがポイントです。 - 動きエチュード
言葉よりも身体を使った表現にフォーカスします。
音楽を流しながら即興的に動き、それをお互いが真似し合うなど、身体表現を中心に楽しむアプローチです。 - アイテム活用エチュード
道具を何か1つ渡して、それを使って自由にシーンを作ります。
実際にはただのボールペンが「魔法の杖」になったり、ぬいぐるみが「ペット」になったりと、想像力が試されます。
エチュードの基本ルール|成功させるためのコツ
エチュードは自由度が高いぶん、最初は「どう動いたらいいんだろう?」と戸惑いやすいです。
でも、いくつかの基本的なルールやコツをおさえておくと、スムーズに取り組めます。
- 否定しない
相手が出したアイデアを否定せず、「それいいね、じゃあこうしてみよう!」と受け止める姿勢が大切です。 - 思いついたら即行動
考えすぎるとテンポが止まります。
まずはやってみることで意外な面白さが生まれます。 - 体全体を使う
セリフだけでなく、動きや表情で表現することを意識しましょう。
体を動かすと自然に気持ちも動きます。 - 集中力を高める
即興での演技は、一瞬の判断が重要。
仲間が今どんな演技をしているのか、細かいところまで目を向けると新しい展開が生まれます。
お題を活用するエチュード|ゲーム感覚で学ぶ
「全部自由でやってください」といわれるとかえって難しいかもしれません。
そんなときは、ゲーム感覚で使える「お題」を用意すると面白いです。
- お題例1:場所のカードを引く
例)学校の教室、海辺、公園、遊園地…など。
どこが当たるかわからないドキドキを楽しみながら、その場所に合う動きを即興で作り出します。 - お題例2:感情のカードを引く
例)怒り、悲しみ、緊張、喜び…など。
シーンの途中でカードを引いて、新しく引いた感情になりきるルールを加えると、思いがけないドラマが生まれます。 - お題例3:道具のカードを引く
例)ボール、カメラ、めがね、長い棒…など。
自分の引いた道具を使ってシーンを作ると、自然とストーリーにひねりが加わります。
シンプルなルールを設定しておくと、誰でも参加しやすくなります。
これは完全なエチュードではありませんが、笑福亭鶴瓶さんがやられていた「スジナシ」のような即興演劇になります。
当時、まだ12歳だった福田麻由子さんとの即興ドラマをぜひ観てみてください。
これが自分だったら?と想像しながら観ると、即興芝居の難しさや面白さがよくわかると思います。
こうしてルールや少しの設定を決めておくと、ゲーム感覚で取り組めるので初心者にもやさしいやり方といえます。
エチュードを通じて演技力を高めるコツ

即興でのリアクションを磨く方法
エチュードの肝は「リアクション」です。
相手がどう動いたか、どんなセリフを言ったかで自分の行動も変わってきます。
- 相手役の目を見る
人は本当に話を聞いているかを、相手の目を通して感じ取ります。
目をそらさず、しっかり見つめて相手の意図を感じ取りましょう。 - 呼吸を合わせる
シーンを一緒につくる仲間の呼吸やテンポに注意を払うと、不思議なほど息が合ってきます。 - 自分の感情に正直になる
相手のセリフや行動を見て、まず自分がどう感じたかに素直に反応しましょう。
恥ずかしがらずに最初のひらめきを大事にすることで、リアルな反応が生まれます。
相手役との関係を深めるエチュード
エチュードは相手役とのコミュニケーションを深める絶好のチャンスでもあります。
お互いにどんなタイミングで動き、どんな性格を演じるのか、即興的にやり取りを重ねることで「人と人との関係性」を学ぶことができます。
- 相手の設定を尊重する
相手が「友達役」を演じたいと思っているなら、それを受け入れて関係性を広げていきましょう。 - 相手のアイデアを補強する
たとえば相手が「あなたは兄弟役だね!」と言ってきたら、「じゃあわたしは弟で、昔からあなたにあこがれている」というようにアイデアを膨らませると、シーンがぐっと面白くなります。 - 素の自分を見せる
即興でやりとりしていると、演者の素の部分が出やすいです。
恥ずかしがらずに自分らしさを出すと相手との距離感が縮まります。
感情を引き出すエチュード|リアルな演技を作る
本番の舞台や映像作品では、役者が本物のように感情を表現することが求められます。
エチュードは、深い感情を引き出す練習としても最適です。
- 具体的なシチュエーションを想像する
ただ「悲しい気持ち」ではなく、「大切な友達が引っ越してしまう」というように具体的な背景を考えて演じると感情が引き出しやすくなります。 - 過去の体験をヒントに
自分が実際に経験した嬉しかったこと、辛かったことを思い出して、その気持ちを演技に落とし込むとリアルさが増します。 - 相手の反応に敏感になる
相手役の表情や声のトーンで、自分の感情も変化させるとより自然な演技が生まれます。
【まとめ】演劇のエチュードを活用して創造力を伸ばそう

エチュードは、演劇の練習方法のひとつとしてとてもおすすめです。
台本がある演技では味わえない「今、この瞬間に生まれるドラマ」が魅力の鍵になっています。
エチュードを続けることで身につくのは、ただの演技力だけでなく、自分の中にあるアイデアや気持ちを素直に表現する力です。
- すぐに行動できる柔軟な頭の回転
- 相手の言葉や動きを尊重するコミュニケーション力
- 失敗をおそれず発想を形にするチャレンジ精神
これらは舞台の上だけでなく、映像の現場でも必要不可欠になります。
もちろん、日常生活でも大いに役立つスキルです。
部活やサークルなどで仲間と取り組んでみれば、盛り上がること間違いなし。
遊び心を忘れずに、ぜひ試してみてください。