舞台の上で拍手を浴びている俳優たち。
華やかに見えるけど、実際の暮らしぶりはどうなんだろう。
テレビには出ていないけど、劇場では確かに輝いている。——そんな舞台俳優たちが、どんなふうに働いて、どうやって生活してるのか。
この記事では、チケットノルマや稽古事情、収入の仕組みなどを通して、舞台俳優の生活の現実をわかりやすくまとめました。
舞台俳優の年収はどれくらい?

パッと見は華やかでも、実際のお財布事情はなかなかにシビア。
それが舞台の世界です。
舞台俳優の平均年収と月収の実態
舞台俳優って、収入の幅がほんとに広いんです。
公演の規模や出演本数にもよりますが、平均すると年収300万円前後と言われています。
でもこの数字、ふたを開けてみるとかなりバラつきがあります。
📊 ざっくり分布イメージ
ステージ | 年収の目安 | 補足 |
---|---|---|
駆け出し(1〜3年目) | 50万〜150万円 | ほぼバイト必須 |
中堅(6〜10年目) | 150万〜300万円 | 映像仕事が加われば上振れ |
主演・有名俳優 | 数千万円〜1億超えも | 一部の成功者のみ |
たとえば、小劇場系でがんばっている若手は、年収100万円すら遠い夢だったりします。
バイトと俳優業をかけもちしながら、なんとか生活をつないでいる人が多いです。‥というか、ほとんどです。
月収ベースで見ると、大手劇団所属でも数万円、無給というケースも。
それでも「好きだからやってる」のがこの世界なんですよね。
ギャラの仕組みとチケットノルマの現実
舞台俳優の収入は、「ギャラ+チケットバック」がセットになるのが一般的です。
チケットバック(キャッシュバック)というのは、俳優自身が販売したチケットの売上に応じて、その一部が報酬(ギャラ)としてその俳優に還元される仕組みのことです。
でも、“ノルマ”という壁が、立ちはだかる場合もあります。特に若手の場合。
🎫 チケットノルマってこういう仕組み
- たとえば「30枚売ってね」と言われる
- 売れ残ったら自腹で買い取り
- チケット1枚3,000円なら、9万円が消えることも…
つまり、ノルマを達成しないと赤字なんです。
さらに言うと、「ノルマを超えてから初めてギャラが発生する」ことも多いので、売れないとゼロ。というかマイナス。
もちろん、全ての舞台がそうではないけど、小劇場系や自主企画公演では、この仕組みがスタンダードに近いです。
項目 | 内容 | 特徴・補足事項 |
形態 | 成果報酬型のギャラ(出演料) | 固定給ではなく、売れた枚数によって収入が変動します。 |
計算方法 | 【出演者の収入】 = 【出演者が売ったチケット枚数】 × 【チケットバック単価】 | バック単価は1枚あたり500円〜1,000円程度が多いです。 |
ノルマ | ノルマ(最低販売枚数)が設定されることがある。 | ノルマを超えた分からバックが発生するのが一般的です。 |
リスク | ノルマを達成できない場合 | 不足分を出演者が自腹で買い取ることになり、マイナス収支になるリスクがあります。 |
主催者の意図 | 興行リスクの軽減と集客力の強化 | 出演者にも集客の責任を持たせることで、公演の成功率を高める狙いです。 |
駆け出しの俳優はどうやって生活しているのか

じゃあ、こんな状況でどうやって暮らしてるのか?という話。
答えはシンプルで、「バイトと節約」です。
たまに「たまに親の仕送り」という人もいますが😵💫
よくある組み合わせパターン:
- 飲食バイト+稽古+公演本番+深夜シフト
- 日中はライブ配信、副業でライティング
- まかない付きバイトで食費節約、交通費は自腹
特に稽古期間中はギャラが出ないので、生活費はまるごと自力。
だから「昼にバイトして、夜に稽古に行く」生活になる人も多いんですよ。
(※または昼に稽古して、夜にバイトに行く)
ちょっと想像してみてください。
朝起きてバイトに向かい一日働き、夕方から夜まではクタクタになるまで稽古……。
または、夕方から夜までクタクタになるまで稽古して、そのあと深夜11時から朝までバイト……。
本気じゃなきゃ無理ですよね、ほんとに。
舞台俳優の収入を決める要素

「ギャラが高いか安いか」だけでは語りきれないのが、舞台俳優として生きることの現実です。
なぜなら簡単には「食えない」とわかっていても「好きで」続けている人もたくさんいるからです。
稽古期間に給料は出るのか
結論から言うと、出ないことがほとんどです。
どれだけ長く稽古をしても、ギャラが発生するのは本番が始まってから。
つまり、稽古中は“タダ働き”です。
でも、商業舞台の場合は「ワンステージいくら」とかではなく「出演料◯◯万円」という感じで、その公演に対しての出演料がまとまった形で決められていることがほとんどです。
なので、長い稽古期間を考慮して、稽古期間中に半額、公演終演後に半額など2回に分けてギャラがもらえる場合もあります。
(※これは所属している事務所や劇団との取り決めにもよります)
稽古期間にかかるお金(=自己負担)
舞台俳優が一番お金を使っているのは、実は「稽古期間」かもしれません。
- ストレス発散のカフェ代(切実)
- 稽古場への交通費(電車代だけでも地味に痛い)
- 食費(まかないなし。外食が続くとすぐ出費がかさむ)
- 替えのTシャツ代、稽古着(汗だくなので着替えがいる場合)
- ボイスレッスン代など(個人で受けるレッスンはほぼ自腹)
- ストレス発散のカフェ代(切実。ちょっと一息つかないとやってられない)
地味な出費の積み重ねですが、これがなかなかバカにならないんです。
実はこの「稽古中のお金の流出」に耐えられるかどうかが、俳優を続けられるかどうかの分かれ道になったりします。
収入がない期間に、じわじわ出ていくお金。
それでも稽古は毎日ある。
——この“静かな出費地獄”に折れずにいられるかが、意外と大きなターニングポイントなんですよね。
舞台のギャラ相場はどれくらいか

舞台のギャラは、「どこに出るか」「どの役か」「誰が主催か」によって全然違うんですが、だいたいこんな感じです。
💰舞台規模別・ざっくりギャラ相場(1ステージあたり)
規模 | ギャラ相場 | 備考 |
---|---|---|
小劇場 | 5,000円〜15,000円 | チケットバック制が多い |
中規模商業舞台 | 2万円〜5万円 | 実力と実績次第 |
大手・有名商業演劇 | 10万円〜50万円以上 | 主演クラスのみ |
小劇場だとチケットバック(キャッシュバック)制も多く、固定ギャラがない場合もあります。
逆に言えば、1枚も売れなければギャラもゼロという可能性もある、なかなかシビアな仕組みですよね。
「本番10ステージあったけど、最終的に1万5千円でした」という話も、決して珍しくない世界です。
交通費や衣装代などを差し引くと、手元にほとんど残らない……なんてことも普通にあります。
それでも舞台に立つ人が後を絶たないのは、お金じゃ測れないものがそこにあるからなんですよね。
舞台俳優は「きつい」と言われる理由
「好きなことを仕事にしてるんだから、いいじゃん」と言われがちですが、現場は甘くないです。
理想と現実のギャップに心が折れそうになる瞬間、けっこうあります。
なぜ「舞台俳優はしんどい」と言われるのか。
その主な理由はこちら。
現場あるある「ここがきつい」
- 収入が不安定:
1〜2ヶ月仕事がなければ即、生活ピンチ
公演が終わってから、稽古や本番期間中にしっかり働けなかったツケが回ってきます。 - 拘束時間が長い:
稽古も本番も、1日中かかることも
朝から晩まで予定が詰まってる日が続くと、体も気力もじわじわ削られていきます。 - 稽古中は無収入:
頑張っても生活費は出ていくばかり
ギャラが振り込まれるのは、本番が終わってから何日もあと。
財布の中はずっと冬です。 - 精神的プレッシャー:
チケットが売れない=自腹の恐怖
売れ行きが悪いと、胃がキリキリするんですよね本気で。
寝ても覚めても動員数のことが頭から離れない日もあったり。 - 役をもらえない時期の焦燥感:
何者でもない感じが襲う
舞台に立たずバイトばかりの期間は、自分が何者なのか、どこにも存在してないような気持ちになることがあります。
収入面に不安があっても、誰かに「がんばってるね」「応援してるよ」と声をかけてもらえたら少しは気持ちが軽くなるんですけど、舞台に立っていないとそういう機会すらないこともあります。
そんなとき不安になったりするんです。
今の生活も、将来的にも。
でも、それでもやめられないんですよね。
気づけばまた、次のオーディションを探してる。
舞台俳優の多くが「好き」が根本にあるから、そう簡単にはやめられないんです。
舞台俳優の年収を上げるためにできること

「演技がうまい」だけじゃ、お金はついてこない。
収入を伸ばすには、ちょっとした“考え方の工夫”も必要なんです。
舞台俳優になるにはどんな道があるか
最初に知っておきたいのは、「どこからこの世界に入るかで、年収の伸び方が変わる」ということ。
主な入口はこの3つ:
道のり | 特徴 | 年収への影響 |
---|---|---|
劇団所属 | 稽古に参加しやすく、舞台経験が積める | 経験は積めるが、収入は少なめ |
フリー活動 | 自由に動ける反面、全て自己責任 | うまくハマれば高収入も狙える |
芸能事務所所属 | 商業舞台や映像仕事のチャンスも広がる | 映像仕事の分、年収が上がりやすい |
いきなり大手事務所に所属するのはハードルが高いですが、小さな事務所でも「営業やマネジメントを代わりにやってもらえる」だけで、ずいぶんラクになります。
舞台だけにこだわらず、映像や声の仕事も選択肢に入れると、収入の可能性はグッと広がります。
同じ「舞台」でも、小劇場系と商業舞台では「出演料」に対する考え方も、対応も全然違います。
舞台俳優を職業にしたいと思うなら、規模の大きな舞台にも出演できる環境に身を置き、そこで活躍できるだけのスキルを身につけることが大事です。
舞台だけでなく映像やCMで収入の幅を広げたいなら、演技レッスンがしっかり受けられる芸能事務所に入るのもひとつの選択肢です。
初心者向けのおすすめ事務所をまとめたこちらの記事も、参考になるかもしれません。
収入を安定させるための副業や仕事の選び方
バイトに追われすぎて稽古に集中できない……そんな状況を避けるには、副業や働き方の工夫が欠かせません。
俳優という職業は体も時間も使うので、「無理なく続けられること」がいちばん大事です。

相性のいい副業タイプ
副業ジャンル | 特徴 | 向いている人 |
---|---|---|
飲食店・接客系 | 融通がききやすく、まかないで食費節約 | 体力に自信ある人 |
在宅ワーク | ライティングやデザイン、データ入力など | PCが得意、静かに働きたい人 |
演技系の講師 | ワークショップや演技指導など | 指導好き、経験豊富な人 |
ライブ配信 | スマホ1つでできて、ファンもつく | 人と話すのが好きな人 |
たとえば飲食店のアルバイトは「まかないが出るから食費が浮く」「急な休みに対応してもらいやすい」など、体力は使うけど味方になってくれる部分も多いです。
特に在宅ワークは時間の融通がききやすく、静かな環境で集中できるので、稽古や公演と両立しやすいですし、体力的にも助かります。
講師業は、ある程度の実績が必要になりますが、自分の経験を言葉にして伝えることにやりがいを感じる人には向いています。
ライブ配信も、稽古の合間に自宅でできるという意味では、舞台との相性は悪くありません。
それぞれに良し悪しはありますが、共通して言えるのは「生活のリズムを崩さずに続けられるかどうか」。
副業は、本業である俳優業を支える“土台”のようなものなので、続けやすさと両立のしやすさを基準に選ぶことが、長くやっていくうえではいちばん大切です。
舞台俳優として長く活動するための考え方
この仕事は、実力よりも「続けられるかどうか」の方が重要だったりします。
演技がどれだけうまくても、続けられなければ意味がない。
だからこそ、“生活をまわす工夫”ができるかどうかが大きなカギになります。
長く続けるためのリアルな工夫:
- 貯金用の口座をつくる(生活費と分ける)
「貯金用」と「生活費用」で口座を2つつくっておく。
ギャラが入ったら、まず今月使うぶんだけを生活費の口座に移して、残りは全部そのまま貯金用にキープ。
これだけでも、気づかないうちにお金が消えてくのを防げます。 - 1ヶ月の支出をざっくりでもメモする
レシートを撮っておくだけでもOK。
何にお金が消えてるかが見えるだけで、節約の意識が変わってきます。 - 体調を崩したとき用の“お守り貯金”を用意する
突然の病院代、舞台を休んだときの生活費。
いざという時の「これがあるから大丈夫」が心の安定にもつながります。 - 週1回は“何もしない日”をつくる
稽古とバイトに追われる日々のなかで、心と体の充電日を意識的につくるのは本当に大事です。 - 誰かとごはんを食べて愚痴る日を忘れない
芝居仲間でも、昔からの友達でも。
しんどい気持ちを「聞いてもらえる場所」があるだけで、続ける力が湧いてきます。
(※愚痴りすぎ注意⚠️愚痴は聞いてくれる人も不快にします)
そして、もうひとつ大事なのは、「この業界に自分の居場所がある」と感じられる瞬間を、どこかでちゃんと持ち続けること。
たとえば、公演後に届くお客さんからの手紙や、仲間との打ち上げの何気ない会話。
それから、LINEやSNSで届いた「観たよ、よかったよ!」というひとこと。
そんなふうに誰かが応援してくれている実感があるだけで、頑張る力になります。
舞台俳優の年収まとめ

舞台の世界に足を踏み入れた人なら、きっと一度は感じたことがあると思います。
「これで生活できるのかな」「このまま続けて大丈夫かな」って。
舞台俳優の年収の仕組みと現実を正しく知ろう
この記事でお伝えしたのは、夢を否定する話じゃありません。
むしろ、夢を現実として続けていくために必要な“視点”や“選択肢”を、少しでも多く持ってもらいたいという気持ちからです。
- 年収には大きな差がある
- チケットノルマや無給の稽古など、独特の仕組みがある
- 生活を安定させるには、副業や働き方の工夫も欠かせない
- 所属先や方向性の選び方で、収入の道筋は大きく変わる
こうした現実を知っておくだけで、「自分はこうしたいかも」「このやり方なら続けられそうだ」という、自分なりの考えがきっと見えてきます。
舞台俳優には、「これが正解」という道がありません。
でも「今の自分にできること」に目を向けていくだけで、少しずつ状況は変わっていきます。
「お金の不安を減らして、もっと演技に集中したい」
「将来のために、今の生活を立て直したい」
「自分のペースで、細くても長く続けていきたい」
そう思ったときにこそ、まずは「生活の土台」を見直してみてください。
いきなり大きな決断をしなくても、今の働き方や収支のバランスを見直すだけでも十分です。
自分に合ったペースで、無理なく続けられる形を少しずつ整えていくこと。
それが、俳優として長く活動を続けるための土台になっていきます。
焦らなくて大丈夫です。
舞台の稽古と同じで、生活も少しずつ整えていけばいいんです。
この記事が、何かを考えるきっかけになったり、気持ちがちょっと軽くなっていたらうれしいです。
