「稽古って何時から?何時間?そもそも何するの?」
舞台の現場に初めて入る前って、わからないことだらけで不安になりますよね。
稽古の流れを知らずに行って恥をかいたらどうしよう、何を持っていけばいいんだろう、バイトとの両立はできるのかな…。
今回は、小劇場から始まり、座長公演やミュージカルの商業舞台まで幅広くやってきた僕が、舞台稽古のリアルを全部お話しします。
これを読めば、初稽古でも堂々と現場に入れますよ。
舞台稽古の1日はどう進むのか?全体の流れをわかりやすく解説

まず大前提として、舞台の稽古の流れは、主催する劇団やカンパニーのやり方を含め、その時々で全然違います。
でも、基本的な「流れ」はあるので、まずはそこから押さえていきましょう。
稽古の始まりは何時からか
これ、めちゃくちゃ気になりますよね。
ただ、正直に言うと「その時々によって全く違います」としか言えないんです。
たとえば小劇場系の劇団だと、ほとんどのメンバーがバイトと掛け持ちしているので、平日は夜6時とか7時スタートの夜稽古メインが多いです。
みんな仕事終わりに集まるから、どうしてもそうなるんですよね。
逆に商業舞台だと、朝10時スタートとか昼1時スタートもあります。(もっと早い場合も)
出演者が舞台を本業にしているプロばかりだと、昼間から稽古できるわけです。(むしろ、それが仕事なので)
子役が出る舞台の場合は、学校が終わってからになるので、やっぱり夕方以降か休日を中心に。
17時とか18時からスタートして、21時には終わるような組み方が多いですね。
稽古の1日が何時間になるのか
これも本当にバラバラなんですが、だいたい3時間から6時間くらいが目安です。
小劇場系だと「18時から21時まで」とか「19時から22時まで」みたいに3時間前後。
平日の夜だけだと、あんまり長くできないんですよね。
翌日仕事の人もいるし、稽古が終わって深夜に働く人もいるので。
商業舞台だと、昼から夕方まで5〜6時間みっちりやることが多いです。
ただ、当然ですが、ずっと動きっぱなしじゃなくて、休憩も入ります。
だいたい1時間やったら10〜15分休憩、みたいな感じ。
稽古休みが入る日の考え方
稽古って毎日あるわけじゃないです。
もちろん、週に何日か、休みが入ります。
小劇場系だと「平日の夜3日と、土日どっちか1日」みたいなパターンが多いかな。
つまり週4日稽古で、週3日は休み。
その休みの日にバイトを入れて生活費を稼ぐわけです。
商業舞台だと、もっとみっちり入ることもあります。
週5日とか週6日とか。
逆に言えば、その期間はバイトができないので、事前に調整が必要です。
休みに関しては、稽古状況の進捗(進み具合)にもよります。
たとえば、本来は稽古休みになってなかったけど、想定以上に順調に稽古が進んでいる場合や、ハードな稽古で出演者にあまりにも疲れが見えるような場合は急遽休みが増えたり。
本読みとはどんな作業か
稽古の最初の方でやるのが「本読み」です。
これ、読んで字のごとく「台本を読む」作業なんですが、ただ声に出して読むだけじゃないんです。
まず、みんなで輪になって座って、自分の役のセリフを順番に読んでいきます。
演出家や他の役者さんの読み方を聞きながら、
「ああ、この場面ってこういう雰囲気なんだ」
「このセリフの前後関係ってこうなってるんだ」
って理解していく時間です。
本読みの段階では、まだ動きません。
座ったまま。
でも、ここでしっかり台本の理解を深めておかないと、立ち稽古に入った時に困るんですよね。
僕が専門学校で教えていた時、よく生徒に言っていたのが「本読みを甘く見るな」ってこと。
ここで役の性格とか、場面の意図とかを掴んでおかないと、後から修正するのが大変なんです。
ミュージカル稽古の進め方の特徴
ミュージカルになると、また話が変わってきます。
歌とダンスが入るから、稽古の進め方も独特なんです。
ただ、これも「絶対こう」っていうルールはなくて、その作品によって全然違います。
歌唱練習から始まる場合もあれば、セリフ合わせから始まる場合もある。
振り付けを先にガンガン入れていく場合もあるし、歌とセリフを平行してやることもあります。
これ、台本の出来上がり具合や曲の完成度によっても変わるんですよね。
まだ曲が全部できてなかったら、先にセリフ部分をやるしかないし。
振り付けの先生のスケジュールに合わせて、ダンス稽古の日が決まることもあります。
僕の経験談で言うと、最初の1週間は歌だけ、次の1週間は振り付けだけ、その後セリフ合わせ、最後に全部を合わせる…みたいな流れもありました。
でも別の作品では、最初から全部を少しずつ並行してやることもありました。
だから「ミュージカルの稽古ってこういう順番」って決めつけない方がいいです。
その都度、流れに合わせていく柔軟さが大事なんです。
舞台稽古の期間と生活のリアル

稽古期間って実際どれくらい続くのか、その間の生活ってどうなるのか。
ここが一番気になる人もいますよね。
稽古期間はどれくらい続くのか
これも本当に作品によってバラバラなんですが、目安をお伝えしますね。
小劇場系だと、だいたい1カ月から1カ月半くらいが多いです。
週4〜5日稽古で1カ月ちょっと、みたいな感じ。
短い場合だと3週間くらいのこともあります。
商業舞台になると、もっと長くなることが多いです。
2カ月とか、大きい作品だと3カ月かけてじっくり作り込むこともあります。
特にミュージカルは、歌とダンスの練習も必要だから、時間がかかるんですよね。
同じ商業舞台でも「座長公演」と呼ばれる舞台の稽古では1カ月以上やることはほとんどありません。
短ければ10日もない場合もあります。(※再演などの場合)
月毎に「博多公演」「大阪公演」などと飛び回っている合間を縫っての稽古なので、そんなに長期間やってられないですよね。
ちなみに、この記事の中で言う「舞台稽古」っていうのは、稽古場での稽古のこと。
業界的には、「舞台稽古」といえば、本番直前に劇場入りして実際の舞台を使って稽古することを指します。
なので明確に使い分けるなら、普段の稽古場での稽古は、ただの「稽古」。ということになります。
この辺の言葉の使い分け、最初は混乱するかもしれないけど、現場に入ればすぐ慣れますよ。
子役の場合は、学校があるので稽古日数が限られます。
だから逆に、稽古期間は長めに設定されることが多いです。
2カ月くらいかけて、週2〜3回の稽古をコツコツやっていく感じですね。
稽古期間の給料はどうなるのか
ここ、めちゃくちゃ大事なところです。
正直に言います。
小劇場系の舞台だと、稽古期間中の給料は「ゼロ」です。出ません。
本番のチケットノルマを売って、そこから自分の取り分が出るかどうか、みたいな世界。
だからみんなバイトと掛け持ちなんです。
そもそも、俳優にとっての給料は「作業料」ではなく、あくまで「出演料」として考えられることが多いので、そもそも稽古だけで出演料が発生するとは考えない方がいいです。
僕も20代の頃は、昼間は大道具のバイトをして、夜は稽古、みたいな生活を何年も続けていました。
正直、しんどかったです。
でも、それが当たり前の世界だったんですよね。
商業舞台になると、ちゃんとまとまった出演料が出ます。
ただ、これもパッケージ的な考え方なので「日当いくら」って考え方ではないです。
たとえば「ギャラは40万」とかの契約の場合、稽古日数が減ったとしても「ギャラは40万」だし、増えたとしても「ギャラは40万」です。多くの場合。
商業舞台はまとまった出演料がもらえるから、稽古期間中もバイトせずに稽古に集中できるわけです。
(※でも、その額は公演によって全く違うので少ない場合もあります)
ただ、商業舞台に出られるようになるまでが大変なんですよね。
最初はみんな、給料の出ない小劇場からスタートすることが多いです。
僕が小劇場から始めた時はチケットノルマを払って出演していた時期もあります。
親として子どもを舞台に立たせたいと考えている方は、この辺の経済的な現実も知っておいた方がいいと思います。
子役の場合は、きちんとギャラが出るケースも多いですが、それでも最初から高額なわけじゃありません。
子どもが舞台に出る場合の生活リズム
お子さんを舞台に出したいと考えている親御さんにとって、生活リズムってすごく気になりますよね。
まず、稽古は基本的に学校が終わってから。
17時とか18時スタートで、21時くらいには終わるように組まれることが多いです。
ただ、本番が近づいてくると、土日に長時間稽古が入ることもあります。
朝から夕方までみっちり、みたいな。
学校の行事や宿題との両立が大変になることもあるので、そこは覚悟が必要です。
僕が専門学校で教えていた時、中学生の子を舞台に出したことがあるんですが、親御さんが送り迎えをしてくれていました。
夜の稽古だと、やっぱり一人で帰すのは心配ですよね。
あと、稽古が続くと疲れも溜まります。
学校の成績が落ちたり、体調を崩したりしないように、親としてのサポートが大事になってきます。
でも、舞台を通して子どもが成長する姿って、本当に素晴らしいんですよ。
最初は恥ずかしがっていた子が、本番では堂々と演技している。
そういう瞬間を見ると、親も「やらせて良かった」って思えるはずです。
稽古に必要な靴と持ち物
「稽古に何を持っていけばいいの?」って、初めての人は絶対悩みますよね。
まず靴。
これ、基本的には「動きやすいスニーカー」でOKです。
稽古場で動くので、底が滑らないもの。
外履きと別に、稽古場用の室内履きスニーカーを用意しておくと便利ですよ。
ただ、ミュージカルやダンスがある作品だと、ジャズシューズとかバレエシューズを指定されることもあります。
これは事前に演出家や制作さんから連絡があるはずなので、指示に従ってください。
本番で使う靴(ヒールとか革靴とか)で稽古することもあります。
特に稽古後半の「通し稽古」や、本番直前の「舞台稽古」になると、本番と同じ衣装・同じ靴でやることが多いです。
持ち物は、こんな感じです。
- 台本(絶対)
- 筆記用具(演出の指示をメモする)
- 飲み物(水かお茶、稽古中は意外と喉が渇く)
- タオル(汗をかくので)
- 着替え(動きやすい服、Tシャツとジャージみたいな)
- 膝サポーターやテーピング(必要な人は)
あと、台本にはカバーをつけることをおすすめします。
稽古を重ねるとボロボロになるので。
クリアファイルに入れるだけでもいいです。
僕が現役の頃は、台本に演出の指示を書き込みすぎて、真っ黒になってました。
でもそれくらい、稽古中はメモが大事なんです。
「ここで振り向く」「このセリフの前に間を取る」とか、細かい指示を忘れないようにメモメモ。
初稽古の日は、ちょっと早めに稽古場に着くようにしましょう。
着替えたり、トイレに行ったり。
余裕を持って準備しておくと、心の余裕にもつながります。
舞台稽古で後悔しないための準備まとめ

ここまで読んでくれたあなたは、もう稽古の流れがだいぶイメージできたんじゃないでしょうか。最後に、実際に稽古に入る前に押さえておきたいポイントをまとめますね。
舞台稽古でつまずかないために知っておきたいポイント総まとめ
稽古に入る前にやっておくこと
まず、台本をもらったら何度も読み込みましょう。
セリフを覚えるのは当然として、他の人のセリフや場面の流れも頭に入れておく。
そうすると、本読み(読み合わせ)の時に「この場面ってこういうことか」ってすぐ理解できます。
あと、自分のスケジュールをしっかり把握すること。
稽古日程が出たら、バイトのシフトと照らし合わせて調整する。
稽古を休むと他の人に迷惑がかかるので、できるだけ全部出られるように調整してください。
僕がバイトと掛け持ちしていた時代、稽古日程が出るたびにバイト先に「この日は休ませてください」ってお願いしていました。
理解のある職場じゃないと、両立は難しいんですよね。
稽古中に意識すること
稽古場では、とにかくメモを取ること。
演出家の指示は、一度聞いただけじゃ忘れます。
今日「ダメ出し」されたことを次回の稽古でクリアできていないと「こないだ言ったよね?」「なんで変わってないの?」ってことになります。
なので、「ここで立つ」「この時こっちを向く」みたいな細かい動きも、全部メモしておきましょう。
わからないことがあったら、素直に質問すること。
「こういうこと聞いたら恥ずかしいかな」と思うかもしれないけど、わからないまま進む方がよっぽど恥ずかしいです。
ただ、質問するタイミングは大事。
稽古が止まっている休憩中とか、演出家に余裕がある時を狙いましょう。
あと、他の人の演技もよく見ること。
自分の出番じゃない時も、ぼーっとしてちゃダメです。
共演者の演技を見ることで、自分の演技のヒントが見つかることも多いんですよ。
稽古場でのマナー
時間厳守は当たり前。
遅刻は絶対にダメです。
遅れるのがわかっている日は、当然、前もって言っておく。
もし電車が遅れたとか、やむを得ない理由で遅れそうな時は、必ず連絡を入れましょう。
稽古場では、スマホは基本的にマナーモードかサイレント。
稽古中にスマホをいじるのもNG。
集中力が切れるし、他の人の邪魔にもなります。
休憩中は、他の人と積極的にコミュニケーションを取るのもいいですね。
舞台って、チームワークが大事なんです。
共演者やスタッフと仲良くなっておくと、稽古もスムーズに進むし、本番も楽しくなります。
親として子どもをサポートする時のポイント
お子さんを舞台に出す場合、親のサポートが本当に大事です。
まず、送り迎え。
夜の稽古だと、一人で帰すのは心配ですよね。
できるだけ送り迎えしてあげてください。
台本を覚えるのも、一緒にやってあげるといいです。
親が相手役のセリフを読んであげて、子どもが自分のセリフを言う練習。
これ、けっこう効果的なんですよ。
ただ、あまり口を出しすぎないこと。
「もっとこうした方がいい」とか「そういう演技じゃダメ」とか、親が演出家みたいになっちゃうと、子どもは混乱します。
演出は演出家に任せて、親は温かく見守る。
それが一番です。
稽古が続くと、子どもも疲れます。
学校の宿題が間に合わなくなったり、睡眠不足になったり。
体調管理には気をつけてあげてください。
無理させすぎないことも大事です。
稽古を楽しむために
最後に、一番大事なこと。
稽古って、めちゃくちゃ楽しいんです。
最初は緊張するかもしれない。
うまくできなくて落ち込むこともあるかもしれない。
でも、台本の世界に入り込んで、役を生きて、共演者と一緒に作品を作り上げていく過程って、本当にワクワクするんですよ。
僕は30年近く俳優をやってきて、今は喉の手術の影響で舞台に立てなくなってしまったけど、稽古場の空気感とか、仲間と一緒に作品を作っていく感覚とか、あの時間は今でも宝物です。
だから、これから舞台に挑戦するあなたには、ぜひ稽古を楽しんでほしい。
「知らないから不安」っていう気持ちは、この記事を読んだことでだいぶ減ったんじゃないでしょうか。
稽古の流れも、持ち物も、だいたいわかったはず。
まだわからないことがあったらお問い合わせフォームから気軽に質問してください。
できるだけわかりやすく回答します。笑
あとは、勇気を出して飛び込むだけです。
初稽古の日、緊張するのは当たり前。
でも、その緊張も含めて楽しんでください。
稽古場に入ったら、きっと「ああ、これが舞台の世界なんだ」って実感できるはずです。
そして、稽古を重ねるうちに、どんどん作品に愛着が湧いてくる。
共演者との絆も深まってくる。本番が近づくにつれて、「この作品を最高のものにしたい」って気持ちが強くなっていく。
その過程を、ぜひ味わってください。
舞台の世界は、決して楽じゃありません。
給料が出ない稽古もあるし、バイトとの両立も大変。
でも、それでも舞台をやりたいって思える何かがあるんです。
客席から拍手をもらった時の感動。
カーテンコールで仲間と並んで立つ瞬間。
あの感覚は、何にも代えられません。
だから、不安な気持ちもあると思うけど、一歩踏み出してみてください。
あなたが稽古場で堂々と動けるように、この記事が少しでも役に立てたら嬉しいです。
舞台の世界で、あなたが輝けることを心から応援しています。

